春風
客室に行くと、柚は起きていた。
「柚、もう起きていいの?」
「あぁ。悪いな、迷惑かけて。」
「ううん、あたしは大丈夫。」
「…何かあった?」
「え?」

さすが、するどい。
あたしの顔が
解りやすいせいも
あるかもしれないけど。
「何でもないよ。」
「…言ったろ?隠すなって。」
「でも、これ言っちゃったら
きっと柚は怒って、
また倒れちゃうよ…。」

出来れば、これ以上
事を大きくしたくない。
それに、一度倒れているのに
これ以上無理させられない。
きっとあたしを信じて
柚を任せてくれたおばさんは、
あたしを信じてくれなくなる。
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