春風
お父さんが帰って行った後、
柚がポツリと言った。
「…ごめんな。騒がしくて。
あの人、父親なんだ。
今は離婚してるけど、
時々会いに来るんだよ。」
「そうなんだ…。
柚は、お父さんの事、好き?」
「…普通、かな。」
「えー、何それ?」
「何を話していいか、
解らないんだよ。
長い間単身赴任で
家空けてたし。
離婚してからも時々来るけど、
母さんも関わりたくない
みたいだし。」
「そんな…夫婦なのに。
…付き合って結婚しても、
いずれはそうなっちゃうの?」
「人によるよ。相性もあるし。
うちの場合は単身赴任中に
親父が浮気したってだけ。」
「そっか…。」
「ただ、俺は
浮気なんかしねぇから。
真桜一筋だし、心配すんな。」
「うん、ありがとう。」

幸せだった。
だけど反面、
すごく複雑な気分だった。
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