春風
すると、お父さんは言った。
「誰もが必ず浮気するとは限らないよ。
真桜のおじいちゃんや
おばあちゃんだって、
あの年になっても
寄り添い続けてるだろ。
きっと嫌なこともあったはずだ。
それでも一緒に居られるのは、
お互いに落ち着く存在だから
じゃないのかな。」
「落ち着く…存在。」
「そ。損得関係なしに、
一緒に居て楽しい、とか
一緒に居て落ち着く
って言えるのは
とても素敵な事だよ。」
「お父さんやお母さんもそうなの?」
「そうだなぁ…
お母さんがどう思ってるかは
読めないけど、少なくとも僕は
お母さんと一緒になって
良かったと思うよ。
真菜も真桜も出来たしね。」
言い忘れてたけど、
真菜はお姉ちゃんの名前だ。
「お父さん…ありがとう。」
「彼を信じてあげなさいよ。」
「解った。」
あたしはリビングを出た。
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