春風
あたしは売店を出て、
柚の病室まで走った。
必死だった。


「ゆうくん!!」
思わず、名前を呼んでいた。
柚は、読んでいた
絵本から顔を上げ、
きょとん、としていた。

「なに?」
「あ…なんでも、ない。
よんでみただけ。」
「ふぅん…へんなの。」


言えるわけ、なかった。
でもこの時あなたは既に
知っていたんだね。
自分の運命に、
気づいていたんだ。
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