春風
柚の家。
あたしは、
たまたま休みで家に居た
柚のお母さんと
向き合っている。

もちろん、柚の希望も
伝えてある。
あたしの気持ちも伝えた。
「…旅行ねぇ。」
「お願いします。
あたし、もっとたくさん
柚と思い出が
作りたいんです。」
「別に行くなとは言ってないわよ。」
「え、じゃあ…。」
「ただ、問題が一個ある。」
「問題…何ですか?」
「積み立てよ。」
「あ…。」


そうなんだ。
行けるか解らない柚は、
積み立てをして来なかった。
柚の家は母子家庭。
一括で払うとなると、
少し厳しいものがある。
「今さら頼る人なんて
居ないしねぇ…
まぁ、交渉はしてみるけど、
期待はしないでね。」
「解りました。」

あたしは少し落ち込んだ
気持ちのまま、柚の家を出た。
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