春風
そして、あたしは
ふと彼の首に目が行った。
いつもと違ったから。

「柚…それ。」
「あぁ、これか。
本当は指に
したかったんだけど、
指輪がブカブカだったから、
ネックレスに
してもらったんだ。」
「そうなんだ…。」

突きつけられる現実。
いつもはすぐ
忘れがちだけれど、
やっぱり影響は出ている。
急に怖くなった。


「おーい、真桜?」
ハッと我に返る。
「何?」
「いや、急に元気
無くなったから。」
「ごめん、大丈夫。」
「…大丈夫って顔か?
それが。強がるなよ。」
柚には全て
お見通しなのかもしれない。
今の不安も、焦りも。
本当は、柚の方が不安だったのに…。
気づいてあげられなかった。
< 84 / 105 >

この作品をシェア

pagetop