介錯、請け負います
『いけませんなぁ……
道端へのタバコのポイ捨ては。
だから喫煙者は、世間で肩身の狭い思いをするんですよ』
「わぁっ!!?」
突然顔の真横から掛けられた低い声に、男は飛び上がって驚いた。
「だ、誰だ、あんたは!?」
いつの間にか男の傍らに立っていたのは……
血のように赤いタキシードとシルクハット。
それに蝶ネクタイ。
頭と手に大怪我でもしているのか、包帯が過剰とも言えるほど巻かれている。
そしてその包帯の隙間から怪しく光る、黄色い二つの眼。
ちょうど口の部分に包帯の切れ目があり、薄気味悪く笑っているように見えた………
『このようなナリで驚かせてしまってすみません。
なにしろ、これが私の仕事着でして……』
赤い紳士は男に対してダンスを申し込むような礼をして、懐から赤い名刺を差し出した。
それを受け取った男が声に出して読む。
「介錯、請け負います……
介錯エージェント
イシュタム………?」