介錯、請け負います
『いかにも。
私の仕事は自殺希望者の介錯をすること。
貴方の希望する自殺の方法と日取りをプロデュース致します』
「はぁ………」
イシュタムという名の赤い紳士の丁寧かつ意味不明な話を、男はポカンした表情で聞いていた。
『調査によるとですね……』
イシュタムは上着のポケットから赤い手帳を取り出すと、慣れた手つきでパラパラとめくった。
あるページで手が止まる。
『お名前は………
都合上、名字のみでお呼び致しますが、堀田様……ですね?
この不景気の中、せっかく一流企業に就職できたというのに勿体ない。
で………
ご自分のやりたい業種に就けなかったことに失望して退社、他の仕事に就職する気も起こらず自殺を考えて始めた………と。
間違いございませんね?』
「あ、ああ………
あんた、何でそんなこと知ってるんだ!?」
たじろぐ堀田という男。
イシュタムは、チョイとシルクハットのツバを摘んで会釈で返す。
『自殺希望者が、自殺を思い立つまでの経緯を知っていなくてはなりませんので。
そうでなくては私の仕事は成り立ちません』