82歳、ベッドの上で
『昔ね孫と一緒に
小さな鉢植えに
チューリップを植えたの
1本だけだけど咲いたときは
とてもキレイでね
孫もすごい喜んでいたの』
それは私が小さい頃に
おばあちゃんの家で
初めての自分のお花
余っていた球根を
私にひとつくれて
植木鉢には絵の具で
絵を描いて
その球根を植えた
何が咲くのか
分からないから
ワクワクしていた
そして毎日
おばあちゃんの
お家に通ってお水をあげた
咲いた時には
すごくすごく嬉しかった
とても可愛らしい
ピンクのチューリップ
おばあちゃんも
良かったねって笑って
私も嬉しくて笑って
とても楽しかったのを
今でも覚えている
おばあちゃんも
覚えてるんだ
おばあちゃんの中に
私は居るんだ…
微笑むおばあちゃんの横で
私は涙を流した
今の私が分からなくても
記憶の一つに私がいるなら
それでいい…