虹に降る雨〜瞭の想い〜
「逢いたかったから。」


そばにいたかったから。

途端に瞳が揺れた。

立ち尽くす体をそっと部屋の中へ押しやる。

背中でドアがガチャリと閉まった。


「寝てなかったんだ?」


「………うん。」


揺れる瞳を揺らさないよう必死になる。

そんな必要はないのに。


「もう少し俺に付き合ってくれる?」


言いながら腕の中に包みこんだ。


「こうしてると安心する。」


君もそうだと嬉しいけれど。


「……りょ……くん。」


「良いから。何も言わなくて良いから。」


髪を撫でる俺に応えるかのように、背中で握られたジャケットが、彼女の手の中で小さな皺を作っていた。



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