faKe anD Real
制服からジャージへ着替えたが、やはり外は寒い。

上着をはおっても、冷たい風が私の顔を歪めさせた。

目の前にあるコンビニ。
近いはずなのに、寒さの所為で足を踏み出せない。

「何食べよう…。」

寒さを紛らわす為に、精一杯他の事を考えた。

美琴の事、テストの事、お母さんの事…





「…。」




阿部の事。


私は、どうしたら良いのか分からなくなった。
高校に入って頭の隅にしまわれていたもの。
ふとした瞬間に苦い思い出となって、それがリアルに再生される。
今、阿部がどこにいるのかは知らない。

大体、阿部の事は忘れたはずだった。

初恋という名前で留めておきたい人だった。

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