野獣狂想曲
「はぁ……」

ため息をつくのはこれで何回目だろう…。

「ため息つくと幸せが逃げるってよく言うよね」

「…玲奈」

いつの間にか前の席に玲奈が座っていた。

「最近は楽しそうだったのに、どうしたの?」

「それが……」

私は玲奈に月島さんとのことを話した。



ピアノに導かれて訪れた音楽室で月島さんに出会ったこと。

ピアノの練習に付き合うことになってしまったこと。

月島さんは噂とは違っていたこと。

そして昨日逃げてしまったことも…。



「…放課後になるといつの間にか消えてるからずっと不思議だったけど、それが原因だったのか」

玲奈は感心したように呟いた。

「…どうしよう。昨日逃げちゃったし顔合わせづらいよ…」

俯く私の頭を玲奈が優しく撫でた。

「じゃあ会わなきゃいい」

「えッ!?」

玲奈の冷淡な言葉に思わず顔をあげた。

「顔合わせたくないんでしょ?」

「でも…、折角仲良くなれたのに…」

私の言葉を聞いた玲奈がにっこりと笑った。

「よしよし。玲奈姉さんがついていってあげましょう」

そしてまた頭を撫でた。

今度は髪がぐしゃぐしゃになるくらい。



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