野獣狂想曲
「ちょっ、ちょっと待って!」

音楽室の扉の前で陽菜に止められた。

音楽室からは綺麗なピアノの音が漏れている。

「心の、準備を…」

そう言って陽菜は深呼吸を数回繰り返していた。

「ねぇ、陽菜」

「ん?何?」

あたしが呼び掛けると陽菜は動きを止めた。

「先にあたしだけ中に入っていいかな?」

「え?」

あたしの提案に陽菜は目をぱちくりさせている。

「ちょっと、話したいことがあるんだ」

「…うん、わかった。じゃあ待ってるね」

陽菜はそう言って微笑んだ。

あたしはゆっくりとドアを開けた。










「……誰だ?」

開けたとたん音は止み、不機嫌そうな月島蓮が振り向いた。

話したこともないあたしの出現に驚いているようだ。

「月島センパイに、話があります」

あたしは後ろ手にドアを閉め、月島蓮に歩み寄った。

「誰?」

月島蓮は怪訝そうに眉を寄せる。

「後藤玲奈。陽菜の親友です」

「宮城の…」

陽菜の名前を出したとたん、あたしに向けられていた視線は外された。

「あなたが何故陽菜に近づいたかは知りませんけど、陽菜を泣かせたら許さないから」

「……俺は――――」



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