野獣狂想曲
「昨日のこと、怒ってるんですか…?」

泣きそうになるのをぐっと堪えた。


拒絶されたのが悲しかった。
先に拒絶したのは私なのに。

自業自得なのに…。


「昨日のことは別に気にしてない。逃げられるのには慣れてる」

「ならどうして…」

「次の日曜日、近くのホールでピアノのコンクールがあるの知ってるか?」

私は静かに頷いた。

1年前、私はそのコンクールにエントリーしてた。
そして、1位をとったんだ。

「これからコンクールまで家で練習することにした。だからしばらくここには来ない」

「そう、ですか」

拒絶されたわけではないとわかってほっとしたけど、月島さんと会えなくなるのは、寂しい。

「それと、ひとつ頼みがある」

「何ですか?」

月島さんと目が合い、捕らえられてしまった。強い目線が、逃げ出せないように私を縛り付ける。

「宮城。見に来てくれ」

「…………」

目線を逸らせないまま、何も言えなくなってしまった。

またあの瞬間のフラッシュバックが襲ってくる。



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