野獣狂想曲
次に目を開けたとき、私は病院のベッドの上にいて、家族と病院の先生の説明で、自分が事故に遭ったことを知った。

ピアノが弾けなくなるかもしれないってことも……。










『5番、月島蓮さん』

過去を思い出しているうちに月島さんの番になっていた。

いつもは制服を着崩している月島さんが、今日は正装をしている。また知らない一面を知って、思わず微笑んでしまった。



静まり返ったホール内に月島さんのピアノの音が響く。



その音を聞いて私は息を呑んだ。

月島さんの音がダイレクトに響いてくる。


過去の私の音とは全く違う。


感情的な音。


私には出せなかった音。





月島さんの演奏が終わり割れんばかりの拍手が鳴り響く中、私はホールを飛び出した。



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