野獣狂想曲
「陽菜っ!」

弾き終わり放心状態でいると、バタンッという扉の閉まる音とここにいるはずのない彼の声が響いた。
ドアの方を見ると息を切らした彼が立っていた。

「月島さん……」

「やっと聴けた、陽菜のピアノ」

「月島さん、どうしてここに?コンクールは!?」

私は思わず立ち上がった。けれど、足に力が入らずそのまま床に座り込んでしまった。

「陽菜!」

月島さん駆け寄ってきて、私の肩を掴んだ。

「大丈夫か?」

私はただ頷いた。

肩に感じる月島さんの手は熱かった。
月島さんはここに来たとき息が切れていたし、もしかしたらコンクールの会場から走ってきたのかもしれない。

「大丈夫です。久しぶりに弾いたから緊張しちゃって……」

私は俯いたまま答えた。
すると月島さんの手はスッと離れていった。

「……俺はずっと追い付きたいと思っていた子がいた」

ハッとして顔を上げると月島さんと目が合った。



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