野獣狂想曲

《告白》

ひとしきり泣いて、落ち着きを取り戻した頃、月島さんの手が離れた。

顔を上げると微笑んでいる月島さんと目が合い、私は真っ赤になって顔を逸らした。

「よし、そろそろ行くか」

月島さんはそう言って立ち上がり、私の手を取って立つのを手伝ってくれた。
そして手を握ったまま歩き出した。

「あ、あの、行くってどこへ?」

「コンクールの会場」

その言葉を聞いてハッとした。

「そうですよ!抜けてきて大丈夫なんですか!?」

慌てて月島さんの顔を見上げたけど、月島さんはまるで他人事のように涼しい顔をしている。

「大丈夫。いざとなれば皇さんがどうにかする」

「コウさん?」

「俺の叔父で、ピアノを教えてくれた人」

月島さんはそれっきり何も喋らず、私も何も言わず、コンクール会場へ向かってただ黙々と歩き続けた。



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