野獣狂想曲
「ピアノ。聴きたいなら聴いてけよ。ただし邪魔するなよ」

「え?」

それだけ言うと月島蓮はまたピアノの前に戻った。


いいのかな…。


とか思いつつも、ここで退室するのも失礼だからお言葉に甘えて聴いていくことにした。

入り口の近くにあった椅子に座った。





~♪



さっきと同じ曲が流れ始める。


私があの時弾けなかった曲。


目を閉じて静かに彼の奏でる音を聴いた。



少し雑だけど、力強くて、真っ直ぐな音。

私には出せない音…。





そういえば、こんな風に誰かの演奏を聴くのはいつぶりだろう。

コンクールではいつも周りの子達の失敗を祈っていた。

私は、"1位"じゃなきゃ意味がなかったから…。





ピアノを弾くのは楽しかった。それはずっと変わらなかったけど…。

いつからだろう。
楽しさよりも、順位を求めるようになったのは…。

良い成績を取れば、両親やピアノの先生は喜んでくれた。



だから――…。









静かな余韻を残して演奏は終わった。



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