恋愛難民
「アァ…お…おまたせぇ」


園田の野郎

いつもに増して緊張しているらしい。


その証拠に、いつも以上に鼻息が荒く、ピュ~ピュ~鳴り止まなかった。

恥ずかしいのかマヤとノリコの方を一度も見ずに
「吉田さぁん 山ちゃんとしずちゃんは、ピュウピュウ 向こうのお店で待ってるてぇ
ピョ~ ハァハァ…」


ちょ…ちょっと…息まで上がっちゃってますよ。


そんなことより車内はえらく静かなことに気が付いた。


マヤもノリコも異常な鼻息、鼻笛に
引き潮のごとくドン引いていた。


ノリコに至っては、カバンを引っ掻き回し煙草を取り出すと

「ねぇ 煙草吸っていい?」

と聞いた。


早いなぁ…
それにしても早い。


すると園田は
「アァ アー、この車ぁ 禁煙車だからぁ
ピョ~」

とルームミラーに貼られた手作りの『禁煙車』シールを指差した。



「あ、そう…」
そう言ったきりノリコは黙り込んでしまった。


あー
あー
こわいよぉ


こんな気まずい空気耐えられないよ

♪チャララ~♪


わたしのケータイが鳴った。

『なんなのコイツ!
あたし耐えられないからっ
無駄にでかくて、ぬりかべじゃん』



ノリコからのメールだった。


あわわわ
あわわわわ…


とりあえず
『キモいのは、わたしも耐えられないよ…
ノリコ様』


と返信した。

ふたりのため息は、海より深かった。

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