なっちゃん
第1章 裏庭から
私立王華(オウカ)高等学校は、今日も平和だ。
……なんて。
1人中庭を歩けば、緑の生い茂る木々や色とりどりの花々が私を歓迎してくれる。
友達がいない訳じゃないけれど、こうして1人になった時は、この中庭を歩くのが好き。
園芸部によって手入れの施されたこの中庭を好んで訪れるのは、恐らくその部員と、その他ごく少数の物好きぐらいだろう。
私はその物好きの部類に含まれている。
せっかく綺麗なお庭なのに、皆来ないなんて勿体無いと思う反面、こんなに綺麗なお庭、誰にも教えないで自分だけの秘密の場所にしたいと思ったりもする。
まぁ、どちらにせよ私はこの場所が好きだ。
鼻歌交じりに中庭をのんびりと歩けば、木の幹に身体を委ね、昼寝をしている男子生徒の姿が目に入った。
ここではあまり人に出くわさないという物珍しさに、私は興味本意で彼に近付いて行った。