なっちゃん
「お詫びに紅茶ご馳走するよ。中入ってって?」
会長が中へどうぞと促す。
「…えっと…私、お仕事の邪魔になりませんか?」
「平気平気。皆も退屈してた所だし、君のお陰で面白い話題も出来た」
「じゃあ、お言葉に甘えて失礼します」
にっこりと笑う会長の後に続いて、生徒会室に足を踏み入れた。
教室2つ分ぐらいの広さだろうか。
壁という壁は棚で埋め尽くされていて、中には様々な資料が並べられていた。
長机の上には、プリントの束が重ねられている。
そして奥を見て驚いた。
黒い革張りの大きな椅子、その前にはノートパソコンが置かれた机。
恐らく会長の席だろう。
その一角はまるで、ドラマなどで見る会社の社長室みたいだった。
手前にはローテーブルとこちらも黒い革張りのソファー。
そこには数人の役員が腰を下ろして談笑をいていた。
これが、生徒会室なんだ。
なんだかカッコいい…!
1人感動していると、会長が
「そういえば、名前聞いてなかったね。何ていうの?あ、僕は高橋時矢だよ」
と、自己紹介をしてくれた。
トキヤ先輩……
名前までカッコいいな。
「私は、和泉奈都っていいます」
「奈都ちゃん…言いにくいから“なっちゃん”でいいかな?」
“なっちゃん”かぁ。
小さい頃呼ばれてたな、ちょっと懐かしい。
初対面の私に、こうしてフレンドリーにあだ名を付けてくれる時矢先輩。
うーん、良い人!