神様の悪戯



アイツ、藍紫ッてゆーんだ。

『あいじ』なんて、変わった名前…

年上…だよね?


どっかでひどく冷静な自分が、本当にどうでも良い事を考える。


現実逃避の兆候かもしれない。

だって、そうしたいくらい現実は受け入れがたいものなんだ。




アイツは、笑顔を浮かべたまま私に手を差し出した。


父の不安そうな視線が痛い。



今になって気付いた事がある。

初対面じゃないのにアイツは『初めまして』と言った。


疑問は浮かんだけど、余計な事を言ってこの場が乱れるのは避けたい。


仕方ない。

とりあえずはアイツに合わせておくのが一番かな…?


時間にしたら2〜3秒で考えをまとめる。


「初めまして。星野華恋と申します。こちらこそ、よろしくお願いしますね?藍紫さん」

ニッコリと満面のスマイルを返し、私はその手を強く強く握った。



そんな私達を見て、父と薫さん2人が安堵する空気が伝わった。




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