神様の悪戯
アイツも応えるように握る手に力を込めてきた。
もしかしたら、アイツは私を覚えてないかもしれない。
そんな事が頭を過ぎる。
けど、それも一瞬だった。
だって、目の前のアイツは満面の笑みを浮かべながらゆっくりと口元を動かした。
声には出さず。
『久しぶり』
そう確かに唇が動いた。
手を離し、向かい合わせで席に着く。
一瞬だけ目が合ったアイツは確かに笑ったんだ。
あの日と同じ、ひどく意地悪そうに。
何がどうなったら、こんな事が起きるのか。
考えても答えなんか出るはずもなかった。
その後、
適当に相槌を入れ、適度に笑いなんとか食事の席をやり過ごしたけど、会話の内容なんてほとんど覚えていない。
せっかくのお料理の味も、この時の私には良く分からなかった。
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