神様の悪戯


片手に傘。
右手に携帯。


来た道を一人で帰るけど、足取りは思ったより軽かった。



歩きながらメールを打った。

相手はもちろん1人しかいない。



【薫さんに、私のお母さんになってくれるように伝えて?後、今日帰ってこなくていいよ(笑)】



しばらくすると携帯が激しく振動した。


確認しなくても分かる。

慌てて電話する姿が脳裏を過ぎり、自然と顔が緩んでしまう。




今は電話に出ないでおこう。

薫さんと2人で居るんだし、私の事は忘れて過ごして欲しい。

そんな私の気持ち、分からないのかな(笑)

一向に止まない電話を私はひたすら無視し続けた。




気付いた時には雨も止んでいて、

傘を閉じて仰いだ空には点々と星が輝いていた。




先は不安だらけだけど…なるようにしかならない。


星に願いを込め、私は携帯の電源を切った。





みんな、幸せになれますように……





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