神様の悪戯



そう言って相手は笑った。



黒目がちな大きな瞳。

軽く染めて、ワックスで整えられた髪。

皺一つないワイシャツに緩くネクタイを占めた彼は満面の笑みを浮かべた。


人懐こい笑顔が印象的だった。




「ぁの、1年生クン?出来れば…離してくれない?」


助けてもらったのは感謝してるけど、さすがにこの状況はマズい。


他の生徒が通りかかったら完璧、勘違いされちゃう。


今はこの腕から…



「うーん…嫌って言ったらどうします?」


私の気持ちもこの状況もまったく気にもせず1年生クンは続ける。


「助けたお礼に…先輩がキス。してくれたら離してあげてもいいですよ?」



はぁぁぁ〜!?

ちょっと、何考えてんの?
キスなんて…



「バッカじゃないの?助けてくれたのは感謝してる。けど、そんなの無理!!離してくれないと私、会議遅れちゃうじゃん」


こんな状態に付き合ってる時間はない。

腕時計を確認すると会議が始まるまで数分しかない。



印象と正反対の性格。

小悪魔って言葉は彼の為にあるんだろうな。

頭の片隅で変な考えが浮かんでは消えた。


1年生クンは私の剣幕に押されたのか渋々まわした腕を緩めた。



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