神様の悪戯
解放されて一息吐く。
再度、1年生クンを見上げるとさっきとは違いひどく真面目な顔をしてた。
遠くの野球部からかけ声が聞こえる。
何とも言い難い不思議な空気が流れた。
話をしてはいけない。
神聖な場所にいるような可笑しな感覚にとらわれて、私は何も言葉が出なかった。
こんな所で時間を使ってる余裕はないのに、ぶつかった彼の視線に私は動き出す力を奪われてしまったみたいだった。
しばらく黙ったままだった1年生クンは一瞬その大きな瞳を閉じた。
再び開かれた瞳には決意の色が伺えて、私はなぜか小さく息をのんだ。
「俺、入学式で華恋先輩に一目惚れしたんです。これから、覚悟して下さいね?」
――――……えっっ!?
頭がついていかない。
言葉の意味が分からない。
首を傾げるくらいしか出来なかった。
「だぁーかーら、華恋先輩が好きなんです。俺の事は…『さくら』って呼んで下さい。ってか、先輩?聞いてます?」
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