神様の悪戯
二人の間にたいした距離はない。
その瞳からは相変わらず、何一つ読み取れない。
けれど、少しだけ優しさが宿ってるようにみえて、なぜか泣きたくなった。
絡んだ視線の糸は簡単には解けなかった。
今まで感じた事のない気持ちが私を包む。
胸の奥が痛くて。
喉の奥が灼けるように熱い。
ぎゅっと力を入れてないと、涙が零れそうになった。
開きかけた口を噤む。
さっきまで伝えたい事があったはずなのに、
今は何を言っていいか分からない。
正確には言葉にしたら、全て見透かされてしまいそうで怖かったんだ。
その場から動かない私に、藍紫兄さんは何も言わなかった。
ただ、ゆっくり私に歩み寄って。
その大きな手でぶっきらぼうに、
でも、壊れ物を扱うように優しく、
私の頭を撫でてくれた。
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