幸福はきっとあなたのもの
消え入りそうな程の声で、
手元の花を愛おしそうに
眺めながら咲雪はゆっくりと話し出した。
「…杜若。
花言葉は、
『幸福はきっとあなたのもの』。
気付いたときには
あたしは聡さんに、恋をしてた。
あの日、あたし泣いていたでしょ?
…ふたりが…
籍を入れた日だった。
あの日、
聡さんはあたしの
『義兄さん』になったんだ。
許されないあたしの想い。
忘れなきゃならない想い。
それでも、消えて無くならない想いに
あたしは…
でも、あの日
要に会って元気さと脳天気さに
救われた部分も、たくさんある。
けど…だからこそ
要の気持ちには応えられない。
あたしの心には、今でも聡さんがいて。
要を傷つけるようなこと、できっ……!」
パサっ
花束が咲雪の腕をすり抜け、
地面に落ちた。