幸福はきっとあなたのもの

それからは毎日、
彼女のもとへと足を運んでいる俺。


「咲雪ーー」



姿が見えたので、
大きく名前を呼んで手を振れば

俺を視界にとらえた瞬間に
眉間にしわを寄せ
露骨に嫌な顔をしてみせる彼女。



「…、仕事中に来んな」


ぼそっとそういう。


「そんなこと言って、もしかして…
咲雪ちゃんたら、
仕事中以外に俺に会いたいって、
遠回しに誘ってんじゃ、……、
はい。違いますよね!」


モップを頭上に振り上げられて、
俺は慌てて訂正した。



まだ背中にひしひしと感じる視線が
とても痛いけど…

まぁ、そこはあえてスルー。


この反応も
幾分かはマシになった方なんだ。


前は訂正しても、
振り上げたモップは必ず俺に
あててたから。


しかも、ひたすら
無視され続けてたなぁ…

遠い目をしてあの頃を思い返す。


いや、そんなに遠くないね。
一ヶ月くらい前だから。












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