幸福はきっとあなたのもの
床にモップかけながらも、
まだ帰ろうとしない俺に
早く帰れ、という
冷たい目線を送り続けている咲雪。
やばい。
追い帰されないためにも、
なんか話題、話題。……
「そ、そーいえばさ咲雪、花は好き?」
目に入った窓の外の花をみて、
とにかく話題をつくった。
「………」
気を逸らすためだけの
質問だったにもかかわらず
咲雪は俯き、答えてはくれない。
「いや、なんか反応してー?」
「…嫌いじゃない、けど…」
長い間のあと、
あまりにも、
唐突で小さい声を聞き逃しかけたが
『嫌いじゃない』はっきりと
そう聞こえた。
素直に『花が好き』。
この一言が言えない彼女を、
とても愛しいと思う。