青空の虹
「美羽、ごめ…っ」


小走りに近付いてきた美羽。

声をかけた途端、笑っていたのに、そのまま俺の左腕を掴んで肩に顔を埋めた。


「美羽?大丈夫?」


泣いているのか笑っているのか……。

見えない表情を探ろうと肩に手を置いた。

腕を握る指に力が入る。


「ごめん。なんだか変な事になって。」


ううん……と首を振る。


「はぁ………。」


大きな溜め息をつき、一呼吸……


「象が見たかった。」


肩に顔を埋めたまま、第一声。


「………ぞう?」


「いなかった……。見たかったのに。」


やっと顔を上げたと思ったら、やや不満気な表情で俺を見上げた。


「ぞう?何?」


「象だよ。知らないの?」


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