ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
次に意識が戻ったとき、茜は、神社の社務所に寝かされていた。
「大丈夫か、茜?」
自分を見つめる従兄の心配げな眼差しに、茜は、自分が居るべき世界に戻ってきたことを知った。
「敬にぃ……」
「軽い熱射病だろうって。少し日差しが強かったからかしらね。でも、すぐに気が付いて良かったわ」
そう言って、心配そうに覗き込んで来た麗香の優しい眼差しに、茜は言葉が出なかった。
お香さん……。
最後の時、一瞬正気に返ったお香はこう言ったのだ。
『私を殺して』
『あの人の元に、逝かせて』と。
愛する者を殺されて。
愛していると思っていた者に裏切られて。
鬼になり果て、最後に望んだもの。
それが、死だったなんて悲しすぎる――。
茜には、あの時、自分が何をどうしたのかは分からない。
ただ、あのお香という鬼女がこの世から消えた。
それだけは分かった。
そして、それを成したのが自分であることも理解していた。