ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「誰かみたいに、助手席で眠りこけて居られないからの。疲れもするじゃろうて。あ。ワシはツナマヨが良いぞ」
玄鬼のセリフは、敬悟を庇うと言うよりは明らかに茜をからかって遊んでいる節がある。
それを敏感に察知した茜は、後部座席から自分の膝の上にちゃっかり移動してきた黒い子猫に、冷たい視線を向けた。
あんたに言われたくない!
茜はそう思ったが、鬼志茂で玄鬼に助けられたこともあって、そこは少し遠慮した。
が、心を読むことができるこの猫マタ君にはすべてお見通しなのか、当の玄鬼は顔にニヤニヤ笑いを貼り付けている。
子供の頃に母親に良く読んで貰った童話『不思議の国のアリス』
あれに出てくるチェシャ猫の笑いって、きっとこんなふうに違いない。
茜は、ツナマヨのおにぎりを美味しそうに、ハグハグ言いながらぱくつき始めた黒い子猫をまじまじと見下ろした。
ほんっと、変なヤツ。
でも、何となく憎めないのよねぇ……。