ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

「な!?」


鬼が、信じられないものを見たように、声を上げた。


今まで顔に張り付いていた余裕の笑みが一瞬にして消えて、後には驚愕の表情だけが残っている。


「敬にぃ!」


鬼の呪縛が解けた茜は、寝台から跳ね降りて声の主、敬悟の元へ駆け寄った。


「まったく。その後先考えない無鉄砲な所、いい加減直せよ」


少し、あきれたような敬悟のセリフに、茜はこくこく頷いた。


「どうやって結界を破った?」


鬼が、呆然と呟く。


「茜は、返して貰う。お前には用は無い。何処へでも失せろ」


にべもない敬悟のセリフに、鬼がすうっとその変化を解いて元の少年の姿に戻る。


「どうやって、僕の結界を解いたんだ!?」


「結界? そんなものあったのか? 俺は、普通に入り口から入ってきたが?」


「なにっ!?」


すっと、敬悟が右手を挙げた。


パチン。


何かが弾けるような音が響いた瞬間、広かった鬼の空間が、狭いアパートの一室に変わった。


人の住んでいない、がらんとした八畳二間の少し埃っぽいアパートの一室には、人間の姿をした玄鬼が待ちかまえていた。


「間に合ったようだな、茜」


玄鬼が、会心の笑みを浮かべる。


「玄鬼!」


茜は、敬悟と共に、玄鬼の元へ駆け寄った。


< 166 / 349 >

この作品をシェア

pagetop