ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

母・明日香が死んだとき、茜は泣けなかった。


確かに悲しかったが、泣けなかった。


なのに、ほんの短い間、一緒に旅をしただけの人の死がこんなにも悲しいなんて。


それに。


『お前が生まれたとき、明日香は自分の持てる力の殆どを、その石に封印した。お前を守るために』


そう、玄鬼は言っていた。


もしかしたら、母がずっと病気がちだったのは、若くして亡くなったのは、石に力を封印した事が原因なのではないか?


『私のせいなのかもしれない――』


そんな思いが胸を過ぎる。


「それを食べたら、少し眠れ。着いたら起こしてやるから」


受け取ったサンドイッチにぼんやりと視線を落としたまま、考えに沈んでいる茜の頭を、敬悟が励ますように、ぽんぽんと叩く。


「うん。そうするよ」


何も言わずに自分を気遣ってくれる、敬悟の優しさが有り難かった。


「ありがとう、敬にぃ」



それでも、やはり眠れそうになかった。

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