ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
広島でレンタカーを借り、鬼珂島に一番近い小さな漁港に向かった敬悟と茜は、船の手入れをしていた漁師を捕まえて、鬼珂島へ渡る船が無いか尋ねてみた。
定期船なども出ていないらしく、島に渡る方法が見つからないのだ。
「ええっ!? 鬼珂島(くがじま)に行きたい?」
五十代前半だろうか、赤銅色に日焼けした厳つい顔の太い眉根を寄せて、漁師が素っ頓狂な声を上げた。
訛りのキツイ野太い声には、尻上がりのイントーネーションがあり、余計に驚いている様子が増幅されて聞こえる。
周りには、のんびりとした南国の港の風景が広がっていた。
午後4時。
時間的には、もう夕方だ。
少しは気温が下がっても良さそうだが、そんな気配は全くない。
きつい磯の匂いと湿気を含んだ空気が、じっとりと体にまとわりつく。
東北からいきなり南国のこの地へやってきた茜と敬悟には、よけいに暑く感じた。
「地図上では、ここからそんなに離れていないですよね? 誰か、個人で船を出してくれる人は居ませんか?」
敬悟の言葉に、壮年の漁師が少し困ったような表情をした。
「……鬼珂島(くがじま)へ、行く船はないんじゃ」
「え?」
「あそこは無人島だから、だれも渡る者はないんじゃよ」
「無人島!?」
驚いた茜と敬悟が同時に声を上げた。