ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
それに、あそこには『鬼神さま』がおるから――と、漁師は声をひそめて話し出した。
「鬼神さま?」
茜が、思わず声を上げる。
鬼押村でも、同じような言い伝えがあった。
鬼の字の付いた土地を巡ってきたのだから、鬼に関する伝承があってもおかしくは無いが、全く同じ『鬼神さま』という言い回しに驚いたのだ。
「そう。桃太郎に出てくる、あの『鬼』ですじゃ」
漁師が、両手の人差し指を二本立てて厳つい顔の眉根を寄せる。
「桃太郎伝説の『鬼ヶ島』だと言われているそうですね?」
敬悟の問いに『うんうん』と、漁師が頷く。
「昔は、あそこには鬼が棲んでおって『近づく者を取って喰う』と言われておってな。まあ、潮の流れが急なこともあって、今でも地元の者は近付きやしませんがね……」
押し黙ってしまった茜と敬悟に、『何、良くある迷信ですじゃ』と漁師が、がははと笑って見せる。
その後、彼は見事な爆弾を投下した。
「なんでも、昔は『鬼が隠れる島』と書いて『キガクレ島』呼ばれておったそうじゃよ」
探し求めた場所の名前を思いがけず耳にして、茜と敬悟は驚きの表情で顔を見合わせた。
やはり、『鬼珂島(くがじま)』=『鬼隠れの里への入り口』に間違いはなさそうだ。