ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
その日は、地元の民宿に泊まることになった。
昼間、話を聞いた漁師の知り合いに、お金を出せば何処にでも船を出す漁師がいて紹介して貰うことができた。
そこまでは良かったが、さすがに『今から日が沈もうとする時間帯に船は出せない』と断られてしまったのだ。
天気次第ではあったが、明日の朝、その人物に『鬼珂島』への船を出して貰う予定になっている。
後は、天気の良いことを願って時を待つだけだった。
宿は、素朴な農家造りの広い屋敷で、地元の新鮮な魚貝料理を堪能し、温泉だと言うお風呂につかり、茜は早めに布団に入った。
――ふう。
木目の天井をぼんやり見詰めて、特大のため息を吐き出す。
『こんなにのんびりしていて良いのかなぁ』と、思わずには居られない。
これでは、まるっきり温泉旅行だ。
和室の続き間を借りたので、襖の向こうに敬悟が居る。
「何かあったらすぐに呼べ」と言ってくれたが、やはり不安がわき上がってくる。
目を瞑ると浮かぶのだ。
あの赤鬼の異形の姿が――。
寒くも無いのに、思わず身震いがでる。
いよいよ鬼隠れの里に近付いたせいもあるのかもしれないが、電気を消すと暗闇の中からすうっと赤鬼が現れて来そうで怖い。
――何も、起こらないよね?
部屋が明るいのも要因だが、疲れているのに神経だけが異様に高ぶっていてなかなか寝付けない。
色々な事が一度に起こりすぎて、ここのところ極端な寝不足だ。
それを自覚しているだけに眠ろうとするのだが、そう思えば思うほど目がさえてきてしまう。
頻繁に寝返りを打ってはため息が漏れる。
そんな時に『それ』は始まった。