ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
半分うとうとしていた敬悟がいきなりの乱入者に驚いて、何事かと布団から半身を起こした。
「け、け、敬にぃ……」
薄闇に目を凝らしてみると、枕を抱えて世にも情けない声で呟く茜が目に入った。
窓の外は激しい雨音と、稲光。
――雷か。
地震・雷・火事・親父。
茜の場合は、雷・雷・雷・雷だった。
雷が鳴り始めたら、茜が静かに眠れるはずが無いのは、敬悟もよく分かっている。
だが、なぜよりによって、『今日』なのだろう?
茜は深刻な寝不足に陥っているが、実を言えば敬悟も似たり寄ったりの状態なのだ。
疲れている。
故に、理性と本能の均衡が崩れる可能性がある。
「……布団、こっちに持って来いよ」
敬悟はどこかでほくそ笑んでいそうな小悪魔を恨みつつ、額に手を当て盛大なため息を付いた。
「ゴ、ゴメンね敬にぃ……」
こわごわ、自分の布団を敬悟の居る部屋に引きずってきた茜は、なんとか布団に潜り込んだ。
「いいから、もう寝ろ。明日は朝一で船に乗るんだからな。寝不足だと酔うぞ?」
「うん……」
よし、眠ろう。
そう思って目を瞑るが、『ぴかっ』と窓の外が明るくなるのが目を閉じていても分かってしまう。
そのたびに、「ひゃっ!」と小さい悲鳴が出てしまうのだ。
「雷は取って食いやしない。大丈夫だから、寝ろ」