ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

一度、過去の鬼隠れの里を見ていて分かって居たことだが、改めて見てもこの地が何処にでもあるごく普通の島であることが分かる。


茜も最初は、忍者映画に出て来るような『隠れ里』的なものを想像していたが、目の前に広がる町並みには、そんな特別な要素は何も見つからない。


古びてはいるが、道路も狭いながら舗装されていて、建っている人家もごく普通の物だ。


茜は、きょろきょろと周りを見回す。


畑には農作業をしている人達がいて、茜たちに気付くと軽く会釈をした。


――本当、普通の町だよ、ね……。


本当にここが赤鬼の居る『鬼隠れの里』なの?


あまりののどかさに、そんな考えが過ぎる。


だが逆に、そののどかさと変哲のなさが、茜の不安を嫌でも仰ぎたてた。


上総の手前その話をするのもはばかられ、茜は隣を歩く敬悟の服の裾をつんつんと引っ張った。


敬悟は茜にちらっと視線を送っただけで、何も言わずすぐに前を向いてしまう。


そのまま無言で上総の後を付いて行く。


――敬にぃ?


いつもとは明らかに違う敬悟の反応に、茜の不安感はますますふくれ上がって行った。

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