ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
12 儀式前夜
「神津さん。今日はもう、一度戻った方がよかばい。これ以上はもう……。今夜はまた嵐が来っけんよ……」
暮れ始めた夏の空を見渡しながら、申し訳なさそうに話を切り出したのは、茜たちが港で話を聞いた漁師こと、渡瀬泰三。
その言葉に衛は、無言で進めていた足を止めた。
急に下がり出した気温が、夜の訪れを告げていた。
茜たちを追って来ていた衛は渡瀬の話から、茜たちが鬼隠れの里に向かったことを確信すると、すぐさま遭難者として届けを出した。
そして、自らも捜索隊の一員として島に渡って来たのだ。
「そうばってんか、不思議たいね。こん石の柱……。鳥居とも違うし、一体何なんなのやろうね? オイも長年ここに居ますけんばってん、崖ん上にこがん物が建っとっなんて初めて知りたばい」
渡瀬の言葉に、衛はその柱を見上げる。
大地から生えた、大きな石の柱。
直径二メートル程の円筒形のその柱は、十メートルほどの間隔で垂直に建っていて、その柱と柱にはしめ縄が渡されている。
それは見る者に一種宗教的なモノ、例えば「鳥居」を連想させたが、もちろん既存の鳥居とは確実に違っていた。