ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「これは、『門』ですよ。鳥居は神域を象徴する一種の門ですから、似ていると言えば言えるのですが、これはどちらかと言えば、『結界』と言った方が良いのかも知れないですね……」
衛の言葉に、渡瀬が厳つい顔に似合わず意外とつぶらな目を剥いて驚く。
「『ケッカイ』って、仏教だか密教だかの、あの結界ね?」
意外とその方面の知識があるらしい渡瀬は、興味津々で瞳を輝かせた。
「ええ。あの『結界』です」
『結界』とは、密教で、修法によって一定の地域に外道・悪魔が入るのを防ぐことを言うのだが、町への門がその結界だというのは、どういう事なのだろう。
渡瀬は恐る恐る、その結界だという鳥居の下に右手を出してみる――。
が、別段、どうと言うこともない。
その脇を、無造作に衛がくぐり抜ける。
そのまますたすたと進んで行く衛の後を、渡瀬が慌てて付いて行く。
百メートルほど行くと、二人の足はぴたりと止まった。
「か、神津さん……こいは、一体?」
渡瀬の目が、驚愕に見開かれる。
そこには、見えていたはずの洞窟が無かった。
あるのは、切り立った崖のみ。
その崖の下には、闇の中でうねる波間が広がっているだけだった。