ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
十八年前、衛は一度鬼隠れの里への扉をくぐっている。
遺跡発掘中の落盤事故。
あの時、衛達は、ここの洞窟の中で遺跡の発掘作業をしていたのだ。
もしかしたら、もう一度、その扉が開かれるのではないか?
そんな、微かな期待があったのだ。
だが、現に、その扉は、固く閉ざされている。
「……あの時は、明日香、君が助けてくれたんだったな……」
「はっ?」
衛の呟きに、渡瀬が怪訝そうに聞き返す。
「いや。何でもないです。……私は今夜は、ここにテントを張ります。明日、夜が明けてから、娘達を捜してみますよ」
「ちょっ、ちょっと待ってくれんねよ! ワイだけば置いて行くなんて出来んよ。相談してむっけんから、待っててくれんねよ!?」
そう言うと、渡瀬は石柱付近で休んでいる捜索隊の方へ駆けて行った。
「……そうか、明日だな。結界が開くとすると、明日の夜なのだな。分かったよ――」
何者かの声に耳を傾けていた衛が、静かにそう呟くと、捜索隊の方へゆっくりと歩いて行く。
薄闇に包まれた島の高台を、湿気を含んだまだ十分に生暖かい風が吹き抜けて行った――。
嵐が、近付いていた――。