ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

「昨夜は、今生の別れは済みましたか?」


闇夜に光る稲妻に照らされた上総の赤い唇が、ニヤリと浮かび上がった。


上総と二人闇の中に残された敬悟は、その言葉に眉を寄せた。
 

「……どう言う意味だ?」 


「言ったでしょう『せいぜい別れを惜しんでおくのですね』と。それにあなたは一体、儀式がどのような物だと思っているんですか?」


「……」


敬悟は、言葉に詰まる。


敬悟とて子供の頃にこの里を出てから、それまでの記憶を封印され、『神津敬悟』として今まで生きてきたのだ。


茜の母、明日香の葬儀の夜、赤鬼に変化した上総にその封印を解かれるまで、自分が神津敬悟以外のそれも、その血に人外の物が混じっていようとは、夢にも思わなかったのだ。

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