ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
自分の正体を知った時、敬悟の思いは一つだった。
『どうしたら茜を守れるか』それだけを、考えた。
逃げ切れないと悟った敬悟に出来ることは、茜をこの里に導き、そして、元凶を絶つこと。
茜の父である惣領を説得する。
もし、それが叶わなければその時は――。
「儀式と言うのは、直系の者同士の契りの儀式を言うのですよ」
世間話をするような気軽さで楽し気に言う上総の顔を、敬悟は信じられない思いで凝視した。
「な…んだって?」
上総の言葉に敬悟は、背筋が凍った。
「中にいるのは、木部の惣領……茜の父親だろう!?」
だからこそ敬悟は、茜に直接的な危害は及ばないだろうと考えたのだ。
「我々に、人の世で言う『血のタブー』は無いのですよ。いかに濃い血を残すか、それが第一優先事項です」
「狂ってる……」
楽しそうに話す上総に、敬悟が吐き捨てるように呟く。
「そう、狂っているのですよ。異星人間の混血などと、考えたのがそもそもの間違いなのです。でも、私は彼らに感謝していますよ。おかげで、こんな面白い身体に生まれ付いた……。私が、いくつだと思います?」
「さあね……」
敬悟が、気のない返事をしつつ洞窟にちらりと視線を走らせる。
茜と一緒に入って行ったお付きの女二人が出て来ると、上総に会釈をして元来た道を帰って行く。