ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「何故、完全に変化しない? 出来ないからだろう?」
挑発を込めた敬悟の問いに、上総が無言でギロリと鋭い眼光を向けた。
妙な覇気のなさ。
敬悟は、戦い始めてから、上総の微妙な変化を感じ取っていた。
最初に、鬼に変化した上総に感じた圧倒的な威圧感。
それが今の上総からは感じられなかった。
『今の上総が相手なら、自分でも五分に戦える』
そんな確信が敬悟にはあった。
「何故、答えない?」
恐らくは、『一度鬼に変化してしまうと、すぐには変化出来ない』のだ。
答える変わりに今度は上総が、びゅっと、鬼の手を振りかざしながら敬悟に向かってくる。
が――、敬悟は、それを、ひょいひょいとかわしてしまう。
原因は、鬼の腕、そのものにあった。
当たれば、その破壊力は計り知れない。
前のように、腹部に食らえば、簡単に致命傷になるだろう。
でも、その腕を操る上総の腕は、人間のものだった。
おそらくは、その筋力は敬悟とそうは変わらないだろう。
いくら破壊力が大きくても、当たらなければ、その力を発揮しようがない。
敬悟はそれを、見切っていた。