ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「な、何? 急にどうしたの!?」
訳が分からず、茜はペンダントヘッドの石を握り込む。
「熱っ!?」
急激に熱を帯び始めている。
――危険だ。
何か危険が迫っている。
今までの経験からそう思った次の瞬間、頭上でピュンと風が唸る音がした。
反射的に音がした方を見上げた二人の視線が、ある一点で固まる。
「何……あれ?」
薄青い空間に、無数の黒い霧のようなモノが蠢いていた。
その黒い影は、ビュンビュンと風を切りながら渦を巻いて一塊りになる。
やがてその黒い塊は、大きな、それも桁外れな大きさの人影に変貌して行く。
憤怒の深紅。
燃えるような真っ赤な双眸が、二人を見降ろす。
頭頂部に生えるのは、一本の鋭い角。
「お、鬼!? 上総の他に、鬼がいたのっ!?」
「いや、少なくてもこの里にはいないはずだ!」
蒼鬼《ソウキ》、白鬼《ビャッキ》、玄鬼《ゲンキ》、そして赤鬼《シャッキ》。里に居た鬼全てが既にこの世にはない。
敬悟が知る限り、少なくとも赤鬼からの情報データには他の鬼の存在は記されていなかった。
居るとすれば、『鬼が淵』の時のような里の外に存在する『はぐれ鬼』くらいの筈だ。
もしくは、赤鬼《シャッキ》が敢えてそのデータを伏せて教えなかったか――。
茜を背に庇い、じりじりと後ずさる敬悟にも焦りの色が隠せない。