ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
敬悟は足を止めた。
全身で息をしながら、茜は敬悟の足下にへたり込む。
「敬……にぃ?」
「茜、石を使え」
「え……?」
「何処でもいい、この場所から遠ざかるんだ。お前にはその力がある」
石をつかう?
石を使って、一人で逃げろって?
「……嫌」
一人でなんか逃げられる筈がない。逃げるなら二人一緒だ。
茜は、ぶるぶると頭を振った。
「茜!」
「嫌ったら、嫌!」
「たまには、素直に言うことを聞いてくれ!」
大鬼から放たれる一陣の黒い影が、動きを止めた二人に狙いを定めるように、空中でピタリと静止する。
次に動けば、やられる。
敬悟は茜を背に庇い、空を睨んだまま黒い追撃者に向かい合った。
精神を統一すると、ぎゅっと目をつぶり、強く念じる。
―― 一度出来たことだ、必ず出来る。
お前は、茜を守るためにここに居るんだろう!
次の瞬間、再び開かれたその双眸は赤く、炎のごとく燃えていた。