ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「な……に?」
ピュン、ピュン。
そこから無数の黒い刃が飛びだし、敬悟の体を斬りつけていく。
全てを避けきれず、何カ所か体をかすめ、血しぶきが上がる。
「くっ!」
考えろ。
考えるんだ。
攻撃をかわしながら、必死に記憶の糸を辿る。
赤鬼から教えられた鬼隠れの里に関する全てのデータ。
ここに来るまでに体験した事の中に、こいつを倒す為のヒントが有りはしないか?
『まぁた、泣いているのか?』
不意に、微かな記憶の断片が蘇る。
遠い幼い日。
あれは、鬼隠れの里に連れてこられたばかりの頃。
気付けば、いつも一人で泣いていた。
母が恋しいと。
母の元へ帰りたいと、泣いていた幼い自分。
まるで敬悟を恐れるかのように、関わろうとしない里の大人達。
そんな中、何かと気に掛けてくれた、陽気な色黒の青年がある時教えてくれた。
『なあ坊主。力ってのはココで使うもんなんだ』
そう言って、敬悟の胸をツンと指さし、形の良い黒い瞳を細めて愉快そうに笑った。
『むねで、つかうの?』
『ハートだよ、ハート』
『はーと?』
『そう、心からそうしたいと念じること。そうすれば、それが力になる』
「は……」
思わず、口の端が上がる。
あれは、あんただったのか、玄鬼。