ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

「敬にぃ!」


茜は悔しかった。


純血体だというのに何の力も出せない、だた逃げ回るしか出来ない自分が不甲斐なかった。


敬悟は、鬼の姿に変化してまで戦っているのに。


自分を守ろうとしてくれているのに。


茜はぎゅっと唇を噛んで、ペンダントの石を握りしめた。


『――行け、茜。


お前ならきっと出来る。


俺たちの叶えられなかった事が、きっと』


茜の胸に、玄鬼の言葉が蘇る。


そうだ。


玄鬼は、石をコントロール出来ると言っていた。


あの時の気持ち。


大切な人を守りたいと思う気持ち。


それを思い出せ。


静かに目を瞑り、石を握る手に力を込める。


力が欲しい。


力が欲しい。


力が欲しい!


ビイィィィン――。


茜の心に共鳴するように、石が激しく振動を始める。


熱を帯び、青白いオーラが立ち上った。


戦う力が、欲しい!!


パアッッ――! と、青い閃光が茜を包み見込む。


とてつもない力が体中にみなぎり始める。


腹の底から沸き出し体中を駆け巡るエネルギーの奔流は、石を握る右手へと集中する。


スウッと、握りしめている石が、細く長く伸びて行く。


それはやがて、青く光り輝く一対の弓と矢へ変化した。


躊躇なく、茜はその弓を構える。


黒い巨大な敵に向かって、力の限り弓矢を引き絞る。


「敬にぃ! 伏せてっ!」


ビィィィーン――。


叫ぶ茜の手から矢が放たれる。


青白い尾を引きながら美しい放物線を描き、黒い影へと吸い込まれて行く。


時が止まった――。

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